動作非常快,主要是先有了X-2當工程技術驗證機驗證了相關技術所以直接作原型機
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http://tokyoexpress.info/2018/11/24/%E7%A9%BA%E8%87%AA%E6%AC%A1%E6%9C%9F%E6%88%A6%E9%97%98%E6%A9%9F%E3%80%8Cf-3%E3%80%8D%E3%80%812025%E5%B9%B4%E3%81%AE%E5%88%9D%E9%A3%9B%E8%A1%8C%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%8B/
2018-11-24(平成30年) 松尾芳郎
FF26DMU-ColinThrom-AWST
図1:(防衛装備庁/Aviation Week Colin Throm) 防衛装備庁公表の「26 DMU」に説明を追加した図。「F-3」は、これを基本に開発中の関連技術を搭載した機体となる予定。機体の外形は開発進行に伴い逐次変化している。
政府は2030年度に導入を目指す次期戦闘機「F-3」の開発の是非を数ヶ月以内に決定する。関係筋によると、防衛省は2019会計年度の始まる4月に開発をスタート、2025年に初飛行をしたい、としている。
これには2019年から始まる5ヶ年の「中期防衛力整備計画大綱」にどのような形で「F-3」開発計画が盛り込まれるかにかかっている。これまで我国の防衛力整備は5年毎に更改される「中期防大綱」に沿って行われてきた。2018年度までの「中期防」は、2013年(平成25年)12月に閣議決定されている。
「F-3」は、2000-2011年にかけて作られた三菱「F-2」戦闘機94機の後継機となるもので、当然のことながら三菱重工が主担当となり開発される見込みだ。
関係筋によると防衛省は、2025年に初飛行した後、2028年から量産を開始、約100機を製造する意向とされる。新任の岩谷毅防衛相は11月6日の記者会見で「「F-2」は15年以内に退役するので、新戦闘機「F-3」は2030年代初頭から配備するようにしたい」と語っている。
新戦闘機開発に際し防衛省では最初から純国産を目指し、10年以上にわたって要素技術の研究を進めてきた。2016年になり、これに加えて米あるいは英との共同開発案が浮上してきた。すなわち;—米国あるいは英国のメーカーと“共同開発”とする案、現在飛行中のFA-18やF-15を基に改良する案、F-35のような開発済みの機体を追加導入する案、の3つである。
“共同開発”案の一つは、米国ロッキード・マーチン社提案の“F-22ラプターを基にアビオニクスを新しいF-35型に改め、それに日本が要求する大型の主翼と日本IHI社製のエンジンを取り付けようというもの。もう一つは、英国が先日発表した次世代戦闘機「テンペスト(Tempest)」開発に、スエーデンとともに参加する案である。こちらは2025年を開発開始としていて、完成が日本の必要とする時期より大幅に遅れる。
技術研究本部(現在の防衛装備庁)が作成した「将来戦闘機の関する研究開発ビジョン〜将来の戦闘機に必要な技術〜」と題する報告がある。この中に「ロシア、中国の増勢著しい戦闘機、特にステルス戦闘機の脅威に対抗するため、我国が開発配備すべき新戦闘機の構想」が示されている。“新戦闘機”は、”数を質で補う”ため、「高度に情報(Informed)化と知能(Intelligent)化がされ、瞬時(Instantaneous)に敵を叩く、いわゆる「i3 ファイター(Fighter)」であることが求められる。具体的には;–
① 射撃機会を増やすのと無駄弾を無くすために、友軍とデータを共用し、誰かが見付ければ誰かが撃つ、打てば当たるクラウド・シューテイング、このために戦場の前方に戦闘機能を担う無人機を展開する。
② 電波妨害に負けないフライ・バイ・ライト・システムを採用する。この技術は、すでに「P-1」哨戒機、「C-2」輸送機に採用、実用化されている。
③ 世界一の素材技術を使い、高い電波吸収性を持つSi-Carbide繊維で機体構造を製作、高いステルス性設計、高い電波遮蔽性を持つプラズマTV用電磁シールドをキャノピーに採用する。
④ 世界一の半導体技術で、次世代型ハイパワー・レーダであるGaN半導体素子基盤を使うAESAレーダーを搭載する。これもすでにF-2戦闘機、“あきずき”、“ひゅうが”など以降の新造護衛艦に採用済みである。
⑤ 世界一の耐熱材料技術で次世代高出力スリム・エンジンを搭載する。IHI社開発の「XF9-1」試作1号が2018年に推力33,000 lbsの最大出力運転に成功、6月末に防衛省に納入されている。
新戦闘機開発予定
図2:(防衛装備庁報告)2010年の報告にある「F-3」開発に関わる要素技術の開発予定表。2018年現在、ほぼこの予定通りに開発が進んでいる。
防衛省はこの構想を基に、海外には存在しない、また、現存する戦闘機の改修型でもない、独自の”F-3” 戦闘機案を、コンピューター・モックアップ(DMU= Digital Mock Up)として2010年代前半から取り纏めてきた。これが平成25年に”25DMU”として公表された機体である。長射程空対空ミサイルを6発収納する大型ウエポンベイを備え、長距離飛行が可能な戦闘機とする構想だ。
ステルス性、航続距離、大型ウエポンベイの要件を備えた戦闘機は世界に存在しないので、既存の機体改修では得られない。従って防衛省は自国開発を提唱している。国内開発が決まっても、1兆円とも2兆円ともいわれる開発費の捻出が大きな問題となる。
防衛装備庁は、毎年秋に年次技術シンポジウム開催して、新戦闘機に関わる要素技術の開発状況を開示しているが、以下にそのあらまし紹介する。
将来戦闘機の胴体関連技術(2018年報告)
戦闘機構造の重要な点は、軽量化構造とAAM(空対空ミサイル)を内装するウエポンベイ構造である。
軽量化
軽量化は次の3つの技術により実現する。
一体化・ファスナーレス構造
複合材製の部品を接着(Glue)で成形結合し、金属製ボルトを減らす。図3に示す新戦闘機中央部分を想定した5.2 m x 8.6 mの供試体が、2017年度に三菱重工で製作された。これまでの試験では、接着接合部を含む構造は十分な強度を有し、欠陥は発見されていない。胴体中央部分は大部分が複合材で作られるが、ランデイングギア結合部とウエポンベイ部分は金属製となる。今後の課題は疲労試験となる。
ヒートシールド技術
軽い熱遮蔽に優れたパネルをエンジン周囲に配置し、周辺の構造を重い耐熱合金から軽い複合材に変える。
高精度構造解析技術
設計図/CAD(Computer Aided Design)モデルから詳細なFEM(Finite Element Method / 有限要素法) モデルに、自動変換するソフトを作成し、設計者の技量に関わらず適切な解が得られるようにしている。
これらにより新戦闘機の中部胴体、後部胴体、主翼の一部分、を模した実物大構造を作成、構造強度と解析精度の試験を行っている。
18-11 試作胴体
図3:(防衛装備庁技術シンポ2018)現在構造強度試験と解析精度の試験を行っている新戦闘機の中部胴体、後部胴体、中央翼の一体構造供試品。これだけの大型部品が試作されたのは注目に価する。写真下部にはエンジン2基の取付け孔と思われる開口部が見える。
ミサイル内装ウエポンベイ
片側でミサイル3基、両側で6基を収納するウエポンベイについては、ウエポン発射とステルス化の研究を行なわれている。ミサイルを内装化することで、抵抗が減り高速飛行ができ、レーダー波反射を抑え、ステルス性が向上する。
この研究は、平成29年度に北海道千歳「札幌試験場」内の亜音速・遷音速・超音速での飛行を模擬できる「三音速風洞」を使って行われた。試験は「ドア開扉」、「ミサイル発射」、「ランチャー収納」、「ドア閉扉」、のサイクルで試験され、高速でのミサイル射出が安全にできることを確認した。
収納する空対空ミサイルは日英共同開発中の長射程「MBDAメテオール」および我国開発の三菱電機製「AAM-4B」を想定している。両ミサイルとも長さは約3.7 m、直径は20 cm前後、重量200 kg程度、射程は100 km 以上、速度はマッハ4以上、とされている。
防衛装備庁によると発射試験はマッハ1.4の速度を模して行われ、ミサイルの発射、つまり、ランチャー展張・発射・ランチャー収納、に要する時間は0.3秒であった、と云う。
ウエポンベイの大きさは長さ6.2 m、幅2 m、深さ1.5 mである。超音速飛行時のウエポンベイ・ドアの開閉は1〜3秒以内であることがステルス性確保のため必要とされている。
18シンポウエポンベイ
図4:(防衛装備庁技術シンポ2018) 平成29年度に実施したウエポンベイの風洞試験に使った実物大模型。ウエポンベイには長射程空対空ミサイル3基が搭載される。ミサイルを発射するランチャー(3基)、開閉時に大きな負荷がかかるベイ扉、が見える。F-35のウエポンベイよりかなり大きい。実機ではこのベイが左右に装備される。
先進RF自己防御システム
敵ステルス機や敵ミサイルから自機を守るため、これらが発する電波を瞬時に発見、電子妨害をするRFセンサー・システムである。機体表面のほぼ全周に張り巡らされたESM(electronic support measures)あるいはECM (electronic counter measures)アンテナを使い、敵ミサイルの発射する電磁波を瞬時に受信・捕捉、直ちに対抗電磁波を発射、これを無力化するシステム。主翼前縁、胴体表面などにESM/ECMアンテナを組込み一体化して、機体全球方位を監視、カバーする。平成25年度から試作研究を開始、平成30年度(2018)で技術試験を完了する。
先進RF自己防御システム概念図
図5:(防衛装備庁)ESM/ECMアンテナで機体全方位を監視、来襲するミサイルを捕捉、無力化する「先進RF自己防御システム」のイメージ。
ESMアンテナ
図6:(防衛装備庁)主翼前縁に取り付けたESM/ECMアンテナ。
統合火器管制システム
戦闘時に友軍戦闘機間を結ぶ秘匿データリンクを介し、電波発信/受信の各種センサーと自軍ミサイルを統合的に管制し、数的に劣勢であっても優位な戦闘を可能とするシステムである。防衛装備庁では2018年度に「統合火器管制システム」の飛行実験を行うべく「F-2」と「T-4」各1機を改修する予定。そして2021年夏以降に実証試験を行うことになる。
このシステムで、データリンクを通じて敵目標情報を共有、誰かがミサイルを打てば、必ず当たる「クラウド・シューテイング」構想の実現を目指す。
火器管制システム
図7:(防衛装備庁)「統合火器管制システム」のイメージ。
将来ミサイル警戒技術
戦闘機のみならず各種航空機に搭載し、排煙の少ない新型ミサイルなどの脅威を速やかに探知できる赤外線使用のミサイル警戒技術である。
大推力エンジン技術
将来戦闘機用エンジンの研究は、平成22年からIHI社と防衛装備庁が共同で行なってきた。これまでに「次世代エンジン主要構成要素の研究」、「戦闘機用エンジン要素に関する研究」で、各構成要素と、核となるコアエンジンの高性能化に取り組んできた。これらの成果を「戦闘機用エンジン・システムに関する研究」に盛り込み、推力15 ton級のXF9試作エンジンとして取り纏め、平成30年6月末に完成した。
XF9はアフタバーナ付き低バイパス比ターボファンで、ファン3段、高圧コンプレッサー6段、そして高圧および低圧タービン各1段の構成。これでファンの空気流量増加と高圧力比を達成、全面面積を小さくしながら高推力を得ることができた。コンプレッサーはデイスク・ブレード一体のブリスク(Blisk)構造で軸長を短縮、軽量化した。燃焼室は広角スワーラ燃焼方式、二重壁構造で燃焼室出口温度/タービン入口温度を1,800℃(3,270°F)にしている。
この温度は、「F-22」戦闘機用のP&W「F119」の1,600℃より高いが、「F-35」戦闘機用のP&W「F135」エンジンの2,000℃には及ばない。
高温度に対応するため、高圧タービン・デイスクには我国開発の溶製鍛造Ni-Co基超合金「TMW-24」、シュラウドにはセラミック・マトリックス複合材(CMC)、タービン・ノズル・ベーンおよび同ブレードにはNi基単結晶超合金、をそれぞれ使用、燃焼室及び高圧タービン動翼・静翼には新しい冷却構造を採用している。
18-11 XF9-1カットビュー
図8:(防衛装備庁)IHI開発の“ハイパワー・スリム・エンジン”「XF9-1」のカットビュー。
直径小の利点
図9:(防衛装備庁2017シンポ)「XF9-1」の入口直径は約1 mで、FA-18E/F戦闘機に使われるGE製「F110」戦闘機用エンジンの1.2 mよりも小さい。
18-11 XF9-1
図10:(IHI) 防衛装備庁に2018年6月末に納入された「XF9-1」エンジンの試作1号。高圧系、低圧系のローターはお互いに反対方向に回転する。これは「F-22」戦闘機用のP&W「F119」エンジンと同じ方式である。これから「札幌試験場」内の「エンジン高空性能試験装置」で高空試験がおこなわれ、その後実機(恐らくC-2輸送機改造の飛行試験機)に装着され飛行試験することになる。
排気ノズルは3次元推力偏向装置付きで試作済み、これを基に実用型の開発を急いでいる。推力偏向ノズルで、排気方向を中心軸から20度まで変えることができる。これは機動性を向上させるのが主目的ではなく、「F-3」ではステルス性向上のため動翼面積を小さくするので、これを補完する目的で採用されている。この研究は2016年から開始し、2020年末に舵面サイズを決める予定となっている。
エンジンのインレット・ガイドベーンは1段なので、敵レーダー波の反射の抑制は機体側のインレット・ダクトを湾曲させて行う。
終わりに
新戦闘機「F-3」に関わる要素技術は、ここに述べたようにほぼ予定通り進捗している。しかし実用機を完成し、量産態勢を軌道に乗せるまでには、これまでにも増して大変な努力と資金が必要となる。2019年から始まる「次期中期防」でどのような判断が下されるのか注目したい。